御前岩への入山ルールについて様々な報告、ご要望、お問い合わせをいただいております。
この度あらためて委員会役員、大沢自治会会長を交えて協議した結果をご報告いたします。
①グレード制限に関して
入山登録する際に記入する最高グレードの欄に、5.10台または5.9などの記載があったり、入山している人の中に明らかな技術不足のクライマーがいることがしばしば見られます。
最高グレードを記載する本来の目的をあらためて記述しておきます。
ここではわかりやすく説明するために、便宜上クライミング技術を「テクニック」、ロープワークなど安全に関する技術を「スキル」とします。
入山の必須要件をデシマルなどのグレードで推し量ることに違和感を感じている方も多いと思います。
もちろん委員会内でも議論してきました。
現在入山を許可できるのは「5.11台(岩)を安定して登れること」です。
それくらいを安定して登れる人の多くは十分なスキルを持ち合わせている可能性が高い、ということがその理由です。
しかし岩場には実際、高いテクニックがあっても妥当なスキルを有していない人や、5.10台しか登れなくともそれなりの経験を積んでいてスキルに問題がない人もいます。
なので、はっきりと提言することは正直難しいのですが、現段階ではそれが安全確保のための最善のルールとなります。
約90名が在籍する当委員会会員には、一般クライマーのスキルを見守り、注意喚起をする役割があります。
しかし厳しく取り締まるようなことはしていません。
また常に会員が岩場にいるわけではないので、クライマー各々の判断に委ねるしかありません。
皆様いま一度、パートナーとお互いのビレイなど、スキルチェックを心がけていただき、常識的な範囲でのご利用をお願いいたします。
②子供連れでの入山に関して
公開当初より多くの会員から報告を受けて当委員会でも議論を重ねており、なんとか可能にできないかというご要望もありました。
結論から申し上げますと入山不可となります。
理由は、やはり危険だからです。
前述した入山条件とも重なり、「ルールだから」という理由のみに言及したくはないのでご説明いたします。
岩場が危険なことは大人も子供も同じですが、本人の意思とは無関係に危険に晒されるという意味では違いがあります。
また、他のクライマーが起こす落石など他者に起因する危険の可能性など、周囲に与える影響も勘案すると、やはり入山を認めるわけにはいかないということです。
公開後3年余りが経ちますが、岩の欠損、落石は未だ頻繁に起きています。
例えば、キャッスルウォールやエレファントロック南面広場にもかなり高いところからの落石が起きています。
特にエレファントロック南面広場は居心地が良いので、多くの子供が居たという報告も受けています。
岩の欠損によるフォールも多数報告されています。
また、熊、猪、蜂、マダニなど、危険な生物も生息しています。
先日も猟師に追われた巨大な猪がクライマーのそばを走って通過しています。
たとえ岩場に多くのクライマーがいても様々な危険が潜んでいることは事実です。
岩場での事故は場所を問わずその岩場の存続に影響をもたらします。
特に御前岩での事故は、周知の通り再公開への経緯もあり慎重にならざるを得ません。
私個人がこの件に関し想うことがあります。
過去に起きた、岩場である夫妻が登っている最中にホールドが欠損、下で遊んでいた我が子に命中し大怪我を負わせてしまうという痛ましい事故があったことを、あらためて教訓としようと思います。
面倒を見ながらでも登りたい気持ちもわかります。
我が子の安全をしっかり守る強い意思も伝わります。
御前岩では今現在そういった自由はないかもしれませんが、諸々の事情があること、これが委員会で出された結論であることをご理解願います。
以前問い合わせていただいた方々におかれましては、私が安易に問題ないと返答してしてしまい混乱を招きましたこと、心よりお詫び申し上げます。
これからも我々は岩場保全、秩序維持活動に努め、入山するクライマー皆様の安全を祈念しております。
何卒ご協力のほど、よろしくお願いいたします。
奥多摩クライミング委員会
徳永信資